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丹野まさよしとがんばり隊

丹野まさよしとがんばり隊

岡山県笠松市視察報告

創政会視察報告
訪問日時:平成22年7月29日
訪問都市:岡山県笠岡市

笠岡市の概要
笠岡市は、人口54,683人、面積136.03K平米(H22,4,1),岡山県の南西部に位置し西を広島県と接する県境の町である。明治期に小田県の県庁がおかれ、県南西部、井笠地方の中心として発展してきた。平成2年3月に笠岡湾干拓池(1,811ha)が完成し、畜産、野菜の露地栽培、花卉などの施設栽培が大規模に行われている。

視察研修テーマ1「笠岡市自治基本条例について」
笠岡市では平成20年3月議会で笠岡市自治基本条例を可決し、同年10月1日より施行している。
笠岡市では、平成15年に「笠岡市みんなが輝くまちづくり条例」、また、平成19年には「笠岡市安全安心まちづくり協働推進条例」を定め、市民との協働によるまちづくりへの理念を明らかにしながら行政運営を行ってきている。
自治基本条例の骨子は、第1章総則、第2章基本原則、第3章市民の役割、第4章市議会および執行機関の役割、第5章市政の運営、第6章参加および協働、第7章財政、第8章住民投票、第9章国、県、他の地方公共団体との関係、第10章その他、の10章からなり、笠岡市における行政運営の総合的な指針を明示し、自治の担い手である市民、市議会、市の執行機関の役割と責務を規定している。
さらに、自治基本条例を基に、市民との協働によるまちづくりを推進するために、平成20年6月に市民と市職員で構成する「地縁組織との協働システム検討委員会」を設置し、地域づくりに取り組んでいる。この会の特色は、市職員が地域を担当し、直接地域に入り地域活動に対する情報提供やアドバイスを行う「地域担当職員制度」も合わせて創設したことである。
笠岡市では、今後公民館単位に地域内の全住民を構成メンバーとする「まちづくり協議会」を立ち上げ、地域の特徴をいかした地域づくりを進めていきたいとしている。
自治基本条例の周知についても、市内24地区に1地区3名づつの職員を配置し、住民説明会をおこない理念を浸透させることにしている。

考察
笠岡市における自治基本条例は、市長のトップダウンによって進められてきた。それだけに、職員や市民への周知と理解が課題となっているようだ。
職員間では、自治基本条例の読み合わせをしているとのことであるし、市民へは前記したとおり地域担当職員を中心とした住民説明会に精力的に取り組んでいる。また、担当の笠岡市協働のまちづくり課では、マスコットをつくり、漫画による広報や講演会なども実施し、理解を深めようとしている。
市議会においても、自治基本条例のなかで市議会の役割と責務を規定はしているものの、議会基本条例はこれからの課題としている。
これからの分権時代に、自治基本条例、議会基本条例の制定は自治体にとって欠かせない要件になっていくことだろうと想定されるが、できれば、三重県伊賀市のように自治基本条例と議会基本条例を同じ時期に制定することが望ましいという感想を持った。名取市においては、議会側が意欲的に議会基本条例を制定するために準備作業を加速させているが、しっかりした議会基本条例を市民に示すことによって、名取市の自治基本条例の制定を促していきたいものだ。それだけにその責任の大きさに身の引き締まる思いがする。

研修テーマ2「笠岡市認知症介護研修センターについて」
施設の概要
笠岡市認知症介護研修センターは、東京・仙台・愛知に次いで全国4番目の認知症介護研究・研修センターとして、平成14年4月に開設された。
研修内容は、次のとおりである。
※「認知症介護者実務者研修事業」
市内の介護老人福祉施設等で実務に当たる職員を対象に実務も交えた研修を4泊5日の日程で年間5~6回開催している。
※市民介護者教室
認知症に対する市民への理解を広め、介護方法などの普及啓発を図るため、ジャズ+講演会などユニークな取り組みを行っている。
※認知症介護専門相談員養成事業
専門知識を持つ職員を養成し、認知症の相談体制を強化している。
※認知症介護相談センター設置事業
認知症の家族を抱える介護者、家族の集いを月1回開催し、情報交換や交流会を行うとともに、電話による相談活動も行っている。
これらの事業は、市の委託事業として指定管理者社会福祉法人 新生寿会に委託されている。また、これらの事業内容はすべて指定管理者の独自のプログラムで運営されている。
委託料は、154万円。と年間運営費として約400万円。

平成21年度における利用状況は、延べ利用人数:1,237人、宿泊人数520人である。
なお、施設は、研修棟(大会議室:定員45名、小会議室:定員16名)と宿泊棟(宿泊室10室)で構成されている。
 


考察
認知症に関する介護研究・研修センターは、仙台・東京・愛知に国が開設している大規模な施設があるが、地方自治体が開設する小規模な施設は笠岡市が唯一である。それには、これまでの先進的な取り組みと成果がある。
笠岡市では平成8年5月に全国の自治体で初めて認知症グループホーム「炉辺の家」を開設した。開設の中心的役割を担ったのが、今回の指定管理者である社会福祉法人 新生寿会である。この法人の責任者は、もともと「きのこエスポアール病院」を経営しており、認知症の研究、治療では全国的に高い評価を得ている。
また、認知症に対する市民への啓発・啓蒙や認知症高齢者の介護技術の習得普及にも大きな役割を果たしてきた。
わずか5万人のまちで、スウェーデン痴呆協会会長を招いて痴呆高齢者グループホームの国際サミットも開催している。この認知症介護研修センターにも毎年厚生省から多くの職員が学びに来るとのことであった。
こういった、核となる団体や病院、専門家グループのネットワークがあることとはいえ、行政のバックアップなしには成しえなかったことだろう。まさに、官民一体となった真摯な取り組みが国を動かし、小規模とはいえ地方自治体で初めての認知症介護研修センターを開設させた力になったと確信する。
協働によるまちづくりの一例としても、行政の在り方を考えさせられた研修であった。



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